食事を子供に完食させる方法
2021-05-09T23:24:27+0900
食事は子供の成長にとって一番大事な要素です。
離乳食を完了してからの食事は、子供の成長にダイレクトに差が出てくるため、できるだけバランスよく十分な量を食べさせる必要がありますが、実際に子育てをしてみるとこれが実に大変で、毎日戦争のようになります。
今日はそんな戦争の日々で闘いに勝利するためのノウハウを共有したいと思います。
子供に必要な食事量 #
東京都幼児向け食事バランスガイドからダウンロードできる指導マニュアルによれば、P.6「幼児の1日分の食事摂取量の適量と献立例」に次のように書かれています。
「日本人の食事摂取基準(2005年版)」〈厚生労働省〉では、3〜5歳における推定エネルギー必要量は男性1,400kcal、女性1,250kcalとなっている。
また、大人の1日分のカロリーは農林水産省の一日に必要なエネルギー量と摂取の目安によると活動量の少ない成人女性の場合は、1400〜2000kcal、男性は2200±200kcal程度が目安です。
とされているので、成長段階の幼児に必要な食事量が大人と比べていかに多いかが分かります。
これについては、指導マニュアルP.25のコラムにもこう書かれています。
幼児は成長のためにたくさんの栄養が必要
1日に必要なエネルギーは、30歳のお母さんならば約2,000kcalであるのに対し、3〜5歳児だと約1,300kcalとされています。このエネルギーはお母さんの体重を約52kg、3〜5歳児の体重を約16kgとして計算されており、体重1kg当たり、お母さん は約38kcal、3〜5歳児は約81kcalのエネルギーを必要とすることになります。つまり、子どもは健康の維持・成長のために、体は小さくても沢山食べる必要があるのです。 一方、子どもの胃や腸は大人よりも小さく、機能も未熟です。そのため、一度に多くは食 べられないことから、1日3回の食事及び適度な間食で栄養を摂取することが望ましく、 朝ごはんは欠くことのできない栄養摂取の機会なのです。
つまり、身体も動かし続けながら毎月1cmづつ身長を伸ばしていく子供の成長を支えるためには、1にも2にも十分な食事を与えることが重要なのです。
基本的な食事構成 #
基本的な食事構成は、食事バランスガイドのコマを参考に構成します。
これを見ると分かりますが、構成する比率は「主食:副菜:主菜 = 5:3:2」くらいになります。つまり雑に言えば、とにかくゴハンを食べさせろという話です。
ここで、主食が多過ぎなのでは?という疑問に思うかもしれませんが、指導マニュアルP.22「主食について Q8」にはこう書かれています。
Q8 主食が多過ぎる気がするのですが?
A8 最近は主食を少なくして主菜を多く取り過ぎる傾向にあります。主菜を多く取り過ぎると脂肪の摂取量が多くなり、生活習慣病予防の上で好ましくありません。ごはん小盛り(子ども用茶碗)1杯、おにぎり1個、食パン1枚(6〜4枚切り)がそれぞれ「1つ(SV)」ですので、3食で3〜4つ(SV)を取ることを目標にします。
要するに、主菜が多すぎると栄養バランスが偏るので、主食を多めにしましょうということですね。
目安となる食事量としては、ごはん1杯100gとしているので、単純にコマにあてはめると、主食だけでごはんを1日400gも食べないといけないということになります。
食事量が不十分になってしまう要因 #
ですが、実際に子供を育ててみると分かるのですが、さまざまな理由で子供に十分な食事量を食べさせることができません。
子供の食事量が不十分になる原因はいくつか考えられますが、その中のよくあるものとして次のケースがあります。
- 食べるのが遅すぎる
- 食べきれず残してしまう
- 途中で気が散ってしまう
- 遊んでしまう
- 泣いてしまう
などなど、完食できない理由は多岐にわたります。
しかしこれらの中のほとんどは、一見して子供の感情が原因のように思いますが、僕の考えでは親の責任範疇であり、親の努力次第で解決可能だと考えています。
ここからは、これまで自分が行ってきた子供に食事を完食させるための対応を紹介していきます。
親が先に折れないようにする #
すべての基本は親が先に折れてはいけないということです。せっかく作った料理を食べてもらえず悲しくなったり、スムーズに食べてくれなくてイライラしたり、順調に子供が食べてくれないと、親のメンタルにもダメージが蓄積します。
ですが、安西先生の言うとおり、諦めてしまうと、そこで試合終了になります。ですので、親が先に諦めてしまうことだけはしてはいけません。鉄の意思を持って、子供が完食するまで絶対に諦めない心づもりでいましょう。
先に折れさえしなければ、必ずや勝利の光明が見えてきます。
食事時間を十分確保する #
1回の食事にどのくらいの時間を確保すればよいのでしょうか。
子供たちが通っている保育園ではだいたい30分〜40分程度の時間を確保しているようなので、少なくともその程度の時間は確保したほうが良いと言えます。
自分が食べる時間も加えるならば、少なくとも1時間程度は食事にかかると考えたほうがよく、30分程度で終わらせようと考えないのが大事です。
もちろん、子供によって食事の早い子や遅い子がいます。ですが、食事の早い遅いに優劣はなく、あくまで食べる量が適切かどうかのみが評価ポイントになるため、遅い子の場合は焦らず、焦らさず、親も忍耐強くつきあってあげましょう。
うちでは、1時間はかかってもよいと考えて時間を確保しています。もちろん、無駄に時間をかけてだらだら食べると満腹中枢が刺激されて、食べられなくなってしまうので、それぞれの子供にあった時間配分にしましょう。
口から出したものを捨てない #
食べたものを口からべ〜っと吐き出すこともよくあります。この時、それを捨ててしまう人と、捨てずにもう一度食べさせる人がいるかと思いますが、僕としては、後者のもう一度食べさせるが正解だと考えています。
理由は、捨ててしまうと、完食したとしても一部を捨ててしまっているので、当初目標としていた食事量を確保できておらず、子供も吐き出せば食べなくても良いと学習してしまう可能性があるためです。
一度吐き出したものであっても、自分が噛んだものであれば、感染症のリスクもありませんし、虫歯菌などもありませんので、衛生面からも特に問題ないはずです。
なので、十分な食事量を確保するという観点からも、口から出したものを捨てるのはしないようにすべきなのです。
あらかじめ量を減らしてしまうのは目標設定ミス #
子供が食べ残さないように食事量を減らしていて、食べ切れたときのみ、追加であげているという人もいるかもしれません。
食事量を減らす理由は「せっかく作った料理を残されると悲しい」、「子供に完食させたい」、あるいは「もったいない」などだと思います。ですが、食事量を減らしてしまうと、目標の達成が困難になります。
例えばドーナツを100個売ることを目標としているのに、売れ残りがもったいないから、80個しか作らなかったとします。この結果がどうなるかと言えば、80個が完売したとしても、絶対に目標の100個は到達できません。また、100個を売り切れるだけのお客がきても80個までしか売れなくなる、いわゆる機会損失が発生します。
つまり、「不十分な食事量での完食 > 十分な食事量」ではなく、「十分な食事量 > 不十分な食事量での完食」を前提に目標設定をしなければならないのです。
また、子供からしてみても、早く遊びたくて完食した場合、追加されたものを食べるモチベーションはありません。このことからも、目標を低く設定することは、あまり良い結果に結びつかず、目標を低くしてでも完食させたいというのは、親(食事の作り手)のエゴと言えるでしょう。
目標の達成のために必要なのは、予算を崩さないことです。なので、「残すかもしれないからあらかじめ減らす」ではなく、「結果的に残してもよいから十分な量を用意しておく」ことが目標達成のための絶対条件なのです。
なお、これは粉ミルクのときに、義母が分量通り作ったミルクを残されるのがもったいなくて、量を減らして作ったといっていたので、それは機会損失であると注意したことがあり、どうやら量を減らしてでも完食させることを目標としてしまうのはよくあるケースのようです。
遊んだり、泣いたりするときは気分転換させる #
食事の途中で、遊んだり泣いたりして食べなくなることは日常茶飯事です。いくらお願いして、説得して、注意しても、ぜんぜん食べてくれず、諦めてしまうこともあるかもしれません。しかし、最初に書いたように、親が先に諦めてしまってはいけません。
子供がまだ小さく、言葉も通じなくて、ちゃんと食べるように説得するのも難しい場合は、一度気持ちを切り替えさせるしかありません。テーブルで食べるのをやめて、抱っこしながら、あるいは遊ばせながらでもいいので、とにかく口に食べ物を入れて食べさせます。
テーブル以外の場所で食事をするのはマナーが悪いと思うかもしれませんが、ここでも目標は「完食 > マナー」にすべきです。マナーは言葉が通じて理解できる年齢になってから、完食するまで席を立たないようにしつけていけば問題ありません。
なお、子供がお腹一杯だと言っても、適切な食事量を守っていて残すのであれば、それは本当のお腹一杯ではなく、単に食べ飽きただけであることがほとんどです。なので、親の方で本当にお腹一杯かどうかを見極めて、食べ飽きただけであれば、気持ちを切り替えさせて食べさせて、完食させましょう。そして、完食したら必ず褒めてあげましょう。
食べさせてと甘えてしまい、自分で食べない #
保育園では自分で食べられているのに、家では「食べさせて〜」と甘えてくることもあります。できれば自分で食べて欲しいところですが、ここも目標は「完食 > 自分で食べる」にすべきです。
親が食べさせれば食べてくれるのであれば、無理に自分で食べるように注意せず、気持ちよく食べてもらい完食させましょう。
食べるのに時間がかかり過ぎる #
食べ終わるまでに時間がかかるのも子供の特徴です。
ただ、食べるのに時間がかかってくると、注意力が散漫になってきたり、疲れてきたり、飲み込めなくなってきたりなど、基本的に悪循環に陥ります。
時間がかかる原因はさておき、時間がかかったとしても一人にせず、根気強く一緒につきあってあげることで、なんとか完食させることが可能です。
ただ、うちでは時間がかかってくると「飲み込めない〜」といって吐き出してしまうことがありました。吐き出してしまうと栄養確保ができず、また吐き出すことで食べなても良いという悪癖がついてしまうので、口から吐き出した場合は厳しく注意します。よく観察してみると、吐き出すのは主に噛み過ぎが原因で、注意力が下がった結果、飲み込むべきタイミングで飲み込まずに、そのまま口で噛み噛みし続けたことにより、味も水分もなくなり飲み込めなくなって、結果として吐き出してしまうというパターンでした。
こういったときに飲み込ませる方法として、水分か味を与える2つがあり、具体的には味噌汁、お水、お茶と一緒に飲み込ませる方法と、@kimhirokuniさんの塩をひとつまみ舐めさせる方法などがあります。
ですが、これらはあくまで対処療法であり、根本となる飲み込むべきタイミングを逃してしまうと、いつまでも同じことを繰り返してしまいます。
そこで考案したのが、時間経過を意識させてながら食べさせる方法です。具体的には、1分の砂時計を目の前に置いて、砂が落ちるまでに飲み込むようにさせます。
飲み込むタイミングを逃がすのは、注意力が散漫が原因ですが、まずは、注意力を砂時計に向けさせます。そして、子供がまだまだ意識しにくい時間経過を、砂時計を利用して視覚的に伝えて、砂が落ちるまでに飲み込まないと時間がかかり過ぎているんだよということを教えるのです。
この方法を取るようになってから、少しづつ時間経過を意識しながら食事できるようになり、噛み過ぎによる吐き出しや、全体的な食事時間短縮などの効果が得られているので、時間や理解できるようになってきたのであればオススメです。
応用として、砂時計を利用してうんこに時間がかかり過ぎる(途中で遊んでいる)という問題も解決されるようになってきました。
使えるものは「のり」でも「ふりかけ」でも何でも使う #
大人としては、白ごはんはそのまま、あるいはおかずで食べて欲しと思うのですが、子供はまだ口中調味がうまく出来ません。
そのそも口中調味自体が文化的技能でもあるので、幼児がいきなりできるものでもありません。うちの子もごはんが口にあるときに、他のものが混じるのを嫌がります。
そこで、口中調味の技能習得はひとまず後回しにして、いまは食事量の確保を優先しました。
つまり、ごはんとおかずは、本人が好きなように食べさせ、ごはんが食べられないというのであれば、「ふりかけ」や「のり」を悩まず投入してごはんを完食に導きます。
意思疎通ができるようになっていれば、「ふりかけ」や「のり」を使う前に、ちゃんとごはんを全部食べることを約束します。そして、食べが悪くなってきたら、約束したんだからちゃんと食べないとダメだよと注意しつつ、なんとか食べさせます。
毎食「ふりかけ」や「のり」を使うことに抵抗を覚えるかもしれません。ただ、「ふりかけ」や「のり」を食べたとしても、それで栄養バランスが偏るほどのインパクトはないはずなので、使い過ぎないかぎりはどんどん使って問題ないと言えます。
動画を見せてでも食べさせる #
動画は子育てにおける最終奥義です。もちろん子供の注意力からすれば、テレビは食事への集中力を妨げる要因になりますので、普通に考えればNGです。ですが、イヤイヤが激しくてどうしても食べてくれず、動画を見せても口の動きが止まらないタイプの子供であれば、動画を見せながら食べさせるというのもありだと考えています。
見せる動画はできるだけストーリーや歌がなく、単調なものが良いと思います。ストーリーがあると、それに集中し過ぎたり、歌をうたったりして、咀嚼が不十分になってしまう可能性が高まります。また、びっくりするような演出が入っている動画も喉につまらせる原因になるので絶対に避けておきましょう。
まとめ #
ここまで、子供に完食させるために考えて実践してきたあの手この手を紹介してきましたが、さまざまな方法があることからもわかるように、完食させるということが、いかに難しいかを物語っています。ただ、やはり大事なポイントは「完食」を最優先として、どうにかして食べさせる方法を考えることにあります。
これらの方法の中には、あまりお行儀のよくないものも含まれていますが、マナーに関しては年齢に応じて適切に教えていけば良いという発想の転換が必要だと思いました。
幼少期は、食事を通じて色々なものごとを覚えていくのですが、同時にすべてのことを教えても混乱してしまい学習効率が悪くなります。なので、もし食事量が不十分なのであれば、まずは十分な食事量を確保できるようにすることに集中してトレーニングを行い、安定して完食できるようになってきてから、マナーなどを集中的に教えていくのが良いでしょう。
思いどおりに動かない子供だからこそ、親としては古い慣習に縛られない自由な発想をもって、 トライアル&エラーの精神で、論理的に検証しながら、実践していく必要があるのです。